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2021/08/03
組織・人創り支援

およそ半年にわたるリリムジカの組織づくりプロジェクトも、いよいよ最終回。第5回と第6回でのセッションの内容とあわせて、全6回を通じたリリムジカの変化をライターの視点でまとめた。

<リリムジカの組織づくりプロジェクトとは>
介護施設などで音楽を通した場づくり(ミュージックファシリテーション)を提供しているリリムジカ。コロナ禍で訪問できない現場が増えた事や、共同代表の辞任など体制の変化によって、組織変容の必要性に直面していた。組織のあり方やリリムジカの存在目的を改めて問い直し、しなやかで強い組織へと進化する為、GEMSTONEが経営層とミュージックファシリテーターのリーダーたち(以下「リーダー」という)に対するシステムコーチング®を主軸として組織づくりへ伴走型の参画を行なっている。
組織づくりプロジェクト連載Vol.1Vol.2の記事はこちら。

各々が感じている課題に対し、想いや願いを共有する

5回目のセッションでは「そもそもミュージックファシリテーターって何?」「リーダーの役割って何だろう?」といった、改めて向き合ってみると明確な答えがなかなか出てこない、そんな問いにメンバー皆で向き合う時間を取った。感じている課題感をメンバーに直接言うのではなく、コーチに伝えるという形を取ることで、お互いに冷静に課題を語り、共有することができていたように感じる。各々意見を共有し、「やっと相手に伝えられた」「自分なりの意見を言えた」といった安堵の声が出てきた。

コロナの影響で、文章を通してコミュニケーションをとる機会が増えたという。文章で相手に伝えようとすると、誤解を招くおそれがあり、必然的に必要最低限のコミュニケーションだけになりがちだ。今回挙がった問いを含め、仕事に関する小さな不安や不満などあえて言葉にしてぶつけてこなかった感情を、コーチがつくる安心・安全な場で共有する。そしてその過程を通して「不安や違和感を口に出してもいい。相手も受け止めてくれる。そんな関係性が私たちにはある」と、互いの関係性を再確認されたようにも見えた。

「感謝の輪」を通して、相手に感謝を伝える

最終回セッションで用いたツールは「感謝の輪」。メンバーに心からの感謝を伝えあうというものだ。「感謝の輪」の時間が始まり、「何を話したらいいんだろう」と悩んだり、「なんだか照れくさいなぁ」と恥ずかしがったりしたメンバーもいたが、徐々に場に感謝の気持ちがあふれてきて、「出会った時はこうだったよね」と初めて会った時のことやこれまでにあったことを思い出し、思わず涙するメンバーも。もらい泣きするメンバーもいた。現状が大変であればあるほど、「今」に追われてしまいがちだ。でも、相手に感謝の気持ちを伝える時間を通して「過去」に想いを馳せ、過去の大変だった時のことも同時に思い出していく。「今も大変だけど、今までも色々と乗り越えてきたよね。これからも一緒に乗り越えていこう、頑張ろう」そんなメッセージが、感謝の言葉の上に乗って相手や周囲に届いている気がした。

全6回のセッションを通したリリムジカの変化

およそ半年間のシステムコーチングを経て、組織にどのような変化が生まれたのだろうか。

システムコーチングが始まったばかりの頃。画面越しに一人ひとりの戸惑った様子が伝わってきた。代表の柴田さんによれば、「これまで経営陣とファシリテーターリーダーで1対1で向き合う場は積極的に設け、信頼関係は築けていたものの、経営陣とファシリテーターリーダー全員が集まってコーチングを受ける機会は初めてで、この場で何を発言したらいいか、分からない人が多かったからではないか」と話す。

そんな状態から、回を追うごとに雰囲気が徐々に変化していった。互いの価値観を深めた回(第3回)で経営層やメンバーの心のもやもややリリムジカに対する強い想いを知り、一人ひとりがリリムジカのことをよりジブンゴトとして捉えるようになったように思う。

また、5回目のセッションでは、リーダーの役割について改めて一人ひとりが見つめ直す過程で、リーダー自身の不安や違和感を受け止めてもらい、安心やつながりを感じられた。そして、同じような体験を自身の担当エリアに所属するファシリテーターにも提供したいと自ら動き出したという。悩んだり不安が出たりした時に、みんなで考えることや受け止めあうことで、新しい道がひらくという関係性の知恵を活かし始めた。

「経営陣」と「リーダー」、上下の関係になるのではなく、一人ひとりが当事者意識を強く持つこと、そして互いの関係性を深め、そこからリリムジカの新たな道を切り拓く。この組織なら、この先どんな困難があっても皆で乗り越えられるのではないだろうか。リリムジカの「これから」が楽しみだ。

(完)

(文:鈴木麻由)