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2020/10/10
インタビュー
プロフィール  
名前:岡本祐太郎
所属:コンサルティング会社
経歴:玩具メーカー→経営コンサルティングファーム
年代:30代前半

きっかけは「世界がもし100人の村だったら」

高校2年生の時に、「世界がもし100人の村だったら」という本に出会ったことがきっかけで、将来は途上国の子供たちの抱える問題に携わりたいと思うようになりました。ただ、当時はプロ野球選手になりたいとも思っていたので、「プロ野球選手になって沢山お金を稼いで、そのお金で途上国の子供たちのために何かしたい」とぼんやり考える程度でした。その後、高校最後の大会前に怪我したことが原因で大会に出られなかったこともあり、大学でも野球を続け、プロ野球選手になる夢を追いかけ続けていました。

しかし、大学2年生の時、故障が原因でプロ野球選手になる夢を諦めることに。「途上国の子供たちの抱える問題に携わりたい」という気持ちは持ち続けていたので、どうやってその問題に携わるのかを含め、大学卒業後の進路と向き合っていました。

ちょうどその頃、周囲では長期休暇を利用して途上国へボランティアに行くことがトレンドでした。でも、ボランティアを継続している人はほとんどおらず、「途上国の抱える問題を解決したい」と思っても、ボランティアでは継続的・根本的な解決には繋がらないことを痛感しました。そこで、収益を上げることで持続可能な仕組みをつくることができる「ビジネス」に可能性を感じるように。「ビジネスを通して途上国の子供たちに直接関わる仕事がしたい」との想いから、当時総合商社や不動産会社からも内定を頂いていたのですが、アジアで事業を展開している株式会社タカラトミーへの入社を決めました。
株式会社タカラトミーで約5年間勤めた後、デロイトトーマツコンサルティング株式会社に転職。理由は、もっと自分のスキルを高めたかったから。コンサルタントとして戦略立案やマーケティングなど、さまざまなスキルを身に付けることができれば、いつか途上国で社会的事業を立ち上げる際に絶対に役に立つ。そう思ったからです。

「MBAは必須か」葛藤の日々

デロイトトーマツコンサルティング株式会社に3年ほど勤める中で、さらなるスキルの底上げのために、MBAをとりたいと考えるようになりました。しかし、アメリカでMBAをとるなら、学費や現地の生活費を含め約2,000万円ほどかかります。「いくらスキルの底上げのためとはいえ、2,000万円もかける必要があるのか。その資金があったら、MBAはとらずに自分で何か社会的事業を立ち上げた方が良いのではないか」そんな葛藤を一人で抱え、揺れ動いていました。


そんな時に、GEMSTONEが主催する「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム(Co-Pro)」第3弾が今年の4月から開催されることを知りました。日本の社会人チームがインドネシアの社会起業家の抱える経営課題に3ヶ月間取り組むプログラムで、遠隔でのワークやオンライン会議に加えて、参加者が現地へ2回出張し、経営や事業に参画します。自分のスキルを使って社会的事業に携わりたいのはもちろんのこと、現時点での自分のスキルがどの程度通用するのか試してみたいと思い、応募する気でいました。しかし、コロナの影響でCo-Proが開催中止に。Co-Proの代わりに開催されることになったオンラインプログラム「EMERGE」への参加をGEMSTONE代表の深町氏から勧められ、迷った末に参加を決めました。

EMERGEプログラム中の写真

「潜在的な価値観」をあぶりだす

EMERGEは、自分のこれまで培ってきた経験や、元来持っている好奇心や価値観を、社会への価値に変えていくことを目的とし、講義やディスカッション、コーチングを通して自分の納得できる答えを見つけていく、3ヶ月間のオンラインプログラムです。私がEMERGEを通して向き合いたかったのは、「MBA取得後のキャリアをどうするか、そもそも本当にMBAはいるのか」。

EMERGEでは、まず過去の自分を思い起こし、自分の本当の価値観を再発見するところから始まりました。小学生の頃の自分の記憶ほとんど薄れていましたが、丁寧に向き合うことに。そこで再発見したのは、「本当の自分は、共通の価値観をもった信頼のおける仲間と、何かをつくった時にわくわくする」ということ。たとえるなら、一人で悪の組織に立ち向かっていく仮面ライダーではなく、個性的な仲間と切磋琢磨する戦隊(レンジャー)といったイメージでしょうか。

小学校から野球を始め、中学で野球部に入ったのですが、チームの中で特別上手かったわけではありませんでした。でも、皆で同じ目標に向かって一つにまとまり、野球を心から楽しんでいた。楽しいからこそ「もっと上手くなりたい、チームに貢献したい」という想いも一段と強くなり、努力することも楽しかったですし、野球もメキメキと上達していったように思います。

高校の野球部では、レギュラー争いが熾烈だったことや監督となかなか上手くいかなかったことから、一人で黙々と自主練に励むことが多く、中学の頃に感じていた「野球が楽しい」という純粋な気持ちがいつのまにか消え失せていました。

大学で野球選手になる夢を諦め、就職してからも、一人で仕事に打ち込むことが当たり前に。周囲からも「リーダーシップをとって一人でガンガン進めていく」タイプだと思われていたようで、自分自身もそう思い込むようになっていきました。

EMERGEでは、毎回の宿題を含め、自分を省みる時間が多くあります。自分とより深く向き合い、宿題を通して考えてきたことを伴走チームに伝えると、伴走チームがもう一歩踏み込んで質問をしてくれます。この工程を繰り返すことで、自分でも気づくことができなかった自分の潜在的な価値観や自分が本当に大事にしたいものに気づくことができる。

自己内省は一人でもできると思われがちですが、伴走チームと一緒に行うことで、自分だけでは見えないもの、記憶の奥底に眠っているけれど、本当は自分が大事にしたかったものに気づくきっかけを与えてくれました。EMERGEは自分にとって「本当の自分が見つかる場所」だと思っています。

チームとのディスカッションの様子

仲間たちと、ビジネスを通して途上国の教育領域の社会課題を解決したい

現在、MBA出願のための準備を始め、MBA取得後は、途上国でビジネスリーダーを育成したいと考えています。他にも途上国向けマイクロファイナンスや現地企業支援も関心があるので、その辺りはMBAで学びながら模索していきたいと思っています。

MBAに出願することを決意できたのは、自分の潜在的な価値観に気付けたことで、周囲と同じ目標に向かって切磋琢磨できる環境に身を置きたいと強く思うようになったから。そしてそれにはMBAという環境が合っていると感じたからです。また、MBAを取得すると、博士課程を修了していなくても大学の経営学部で教鞭をとることが可能になります。MBAを取得して途上国の経営学部の教授になり、現地のビジネスリーダーを育成することができたらいいなと考えています。

この決断に至るまで、EMERGE参加中も色々と悩みました。でも、一緒に支え合う仲間がいたからこそ、最後まで自分と向き合い続けることができたと思っています。他の参加者たちは皆バックグラウンドが異なり、多様性にあふれていました。ディスカッションを通して、自分一人では考えつかなかったような意見が出ることもあり、毎回新たな気づきを得ることができました。フィールドや目標は違えど、同じモチベーションを持った新しい仲間を得られたのが、今回EMERGEに参加した一番の収穫だったと思います。

EMERGE参加前は、「途上国で社会的事業をやりたい」という漠然とした想いを抱えていましたが、EMERGEに参加したことでその想いを再確認できたと同時に、「信頼できる仲間と協力しあいながらその夢を叶えたい」「途上国での教育分野のビジネス立ち上げや現地ビジネスリーダーを養成したい」といった、達成したい方向性が見えてきました。霧のかかった状態から、進むべき方向に光が見えてきた。そんな感覚です。この先も壁に直面することがあっても、今のこの感覚を忘れず、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。

高杉晋作像の前で

インタビュー・記事執筆(鈴木麻由

EMERGE プログラムサイト

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